街を歩く

街と町、村と郡、それぞれ何が違うのか。

そんな考えれば解るようなことだけれど、実際に歩くことでその違いを肌で感じることができる。

目に見えるものが全てではないことを、片目を失った今だからこそ、匂いや温度や風の感触に敏感になった。

 

つい先日まで病院のベッドで横たわっていたけれど、最近は自らの足で今まで通りとまでは言えないが、歩けるようになった。

自分では結構満足している。

 

知ってる街の知らないところを探して歩く。今の自分にとってはそれだけでもじゅうぶんに楽しい。

ふらっと入ったカフェにはマッキントッシュのアンプと大きな古いスピーカーがあって、そこから流れるレコードが何とも気持ちがいい。

 

イヤホンで音楽を聴くことが出来ないから、こうして程よいボリュームで綺麗な音質の音楽を聴けるのはとても嬉しい。

 

そこから流れる風街ロマンは夏目前のこの時季の昼下がりにはぴったりだ。

 

本当、いつぶりだろうかこんなにも心から癒されたのは。

そんときばかりはこの辛い状態を忘れることができる。

 

そして、家に戻る。

玄関を越えた先で現実に戻される。

大量の薬と補助器具が床に散乱している。

 

現実こそ夢であれ。

 

救いの手を待っている。

僕から闇を消し去ってくれるヒーロー待ち焦がれている。